「只見線と会津」  2023.11                   「よかったところ」topへ  

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 三陸沿岸の自宅からは、東北地方の中で時間的に最も遠方なのが奥会津ではないでしょうか。すぐ隣は新潟県・群馬県・栃木県です。50年近く前に新潟の小出から尾瀬に入り、福島の桧枝岐へ、3泊で公共交通機関と徒歩で通ったのが初めてでした。駒止(こまど)トンネルはまだ開通しておらず、バスで際限なく繰り返すカーブを経て峠を越えました。今回はその峠や駒止湿原は行きませんでしたが、復活した只見線などをめぐることができました。

 東北自動車道を南下しながら奥会津を目指すには、天栄村から入るのが普通のようですが、比較的後から開通した甲子トンネルを通ってみたいのと、その先に道の駅しもごうがありますので、そこを経由して1日目の宿を借りました。あまり通行量は多くなく、泊った車は大型が2・3台ほどです。
 2日目の予定は只見線の乗車が主目的です。この時期は夜明けが遅いので、何日か前の除雪跡が残った道を駒止トンネルを通って只見駅を目指します。この日は日中は晴れそうですが、朝は霧が深く立ち込めている中を進みます。
 只見駅前には乗車予定時刻の少し前に着きましたので、乗車中に食べようかと思っていた朝食をキャンカーでいただきます。駅前駐車場には他に2・3台が止まっています。
 只見線は、2011年の7月に豪雨災害で不通となり、2022年に多額の費用を沿線自治体等で出し合って復活開通させたところです。
 2011年は、東日本大震災が3月に発生して、そこの現地で格闘していた私には、奥会津でこんな被害を被っていたことはあまり知りませんでした。ともかく路線を少しでも利用することが、応援につながることになると思われますので、乗りに来ました。
 再開通直後には乗り切れないほどのお客さんが詰めかけたということだったので、混雑が心配でしたが、駅に来てみるとお客さんは地元のおばちゃんが一人だけで、大丈夫のようです。
 今回はキャンカーでの旅なので、只見線の利用は区間往復となります。列車ダイヤとにらめっこして選んだ行程は、只見駅7:01初の上り始発列車で会津川口まで往復するものです。この区間は被災してしばらく不通になっていたところでもあり、会津川口での復路乗り換えも十数分でちょうどよいものです。往復合計一日に6本の区間ですが、この後は夕刻近くなるので朝の便にしました。
 窓口で切符を買おうとすると、乗車予定の列車は、小出から来る途中で熊と衝突して只見駅まで来られないとのこと。代わりに会津若松から回送列車が只見までやってきて、只見始発で上り列車を運行するようです。40分ほど遅れるようですが待つことにします。
 駅員さんから貴重な情報をいただきましたが、掲示では12月からは只見駅は日中12〜14:40だけ駅員さんが詰める、その他の時間帯は無人駅になるようです。今回のような事態に対面で対応することは困難になるかもしれません。
 この間にたくさんある観光案内類を精査して必要なものをいただきます。
 会津川口まで往復の切符を買おうとすると、駅員さんのお話では、折り返しの列車に乗り換える時間が取れないかも知れないとのことです。本来は同じホームで上り下りの乗り換えが出来るのですが、ダイヤが遅れているので、単線区間(川口駅直前まで)に重複しない範囲で直ぐに下り列車が出るものと思われるとのこと。このため一駅手前の本名(ほんみょうではなく、ほんな)までの往復を勧められましたので、その区間の切符を買います。 
 回送列車が到着しました。乗客は私たち二人と、先に来て待っていて会津若松まで行くおばちゃん(90近い?)の3人で、ほぼ「貸切列車」です。心配していた混雑に当たることなく、右に左に前に後ろに移動しながら、車窓からビデオや写真を撮りまくることができます。車両は比較的新しくて、前後に運転席が付いてトイレもある、一両で完結する形式です。
 定刻を50分ほど遅れて上り列車は出発しました。
 只見駅の構内には、上写真のようなダンプカー?がありました。よく見ると普通のダブルタイヤ後輪のさらに後ろに、鉄道軌道用の車輪も付いています。つまり普通の車道を移動して踏切などから線路に入って作業をすることができるようです。

 会津は戊辰戦争における激戦の地であり、関連した遺跡等が多くあります。
 列車は災害から復旧した橋梁や区間を次々と通りながら進んでゆきます。
 会津川口の一つ手前の本名で、前述のように往復乗り換え時間の関係で下車します。折り返しの列車は時刻表を見ると15分くらいでやってくると判断して駅の近くを散策します。 雪の深い地域らしく、出入り口の雪囲いや、雪下ろしに使う梯子(あるいは二階から出入りするのに備えた?)が常設してあったりします。
 奥会津地域の何件かの家の庭に、池があるのを見かけました。庭の装飾用とも見受けられませんが、こちらでは鯉を飼っていました。想像ですが、米沢などと同じく、冬のたんぱく源に食用の鯉を飼っていた名残なのかもしれません。
 ウチと同じく、干し柿を作っているお宅もあります。一連にすごい数の柿粒が下がっています。 冬の暖房熱源にたくさんの薪が積み重ねられているお宅もあります。
 右写真は消火栓のようです。縦に三段になっているので、これも積雪対策で、除雪しなくても取り出せるようにしているものと思われます。
 もう少し散策したかったのですが、本名駅横の踏切遮断器で警報が鳴りま始めました! 予想より早く、やはり只見の駅員さんのアドバイス通り、川口駅での乗り換え時間はなく、単線区間の走行に支障がないぎりぎりのタイミングで出発してきたようです。急いで駅に戻って下り列車に乗ります。
 下り列車には結構たくさんのお客さんが乗っていました。多くが観光客のようです。只見駅に戻ると、待ち時間で一時下車する人もいて記念写真を撮っています。駅舎では、朝はまだ開いていなかった「只見線ギャラリー」も開いていて見学できます。
 このあと只見町内を見学しますが、夕刻に訪れたビューポイントの報告を先にアップします。
 第一只見川橋梁ビューポイントへ向かいます。道の駅会津街道みしま宿から山道を少し上がったところにあります。まだ紅葉が残っている時期です。見物の人たちも多く集まっています。

 ここまでの只見線関連記事は、別途動画でアップしてありますので、
 下の写真をクリックしてご覧ください。
 只見町内の見学経過です。国道252号を新潟方面に向かうと、向こうに巨大な壁が見えてきます。(右写真だと壁の上のほうが雲の中に隠れています)近づいて行くと、壁ではなくダムの堤体であることが立体的に見えてきます。
 道は直進だとダム(田子倉発電所)の構内に入ってゆきそうですが、国道は右折して、田子倉ダムの上部へ向かうつづら折りの坂道へと進んでゆきます。
 ダムの上部には展望台やレストハウスがあるのですが、霧で見えないのと、オフシーズンに入って、多分商業施設はお休みのようで、歩廊やトイレだけは利用可能になっています。 夏季にはPキャンにいいかもしれません。
 湖面に下りる監視ボート用のリフト・ウィンチが見えます。以前に観光船に乗って湖面を楽しんだことがありました。
 田子倉ダムは貯水量の国内順位でいうと岐阜の徳山ダム、直上流の奥只見ダムに次ぐ3位のようです。奥只見ダムへは2007年に行ったことがありますが、両方のダムは映画「ホワイトアウト」の舞台になったところでもあります。
 国道沿いにある水力発電関連の広報施設「只見展示」です。(観光情報はこちら)名称からだけだと何の施設かわかりませんが、電源開発株式会社(J-Power)の只見地域にある水力発電施設を中心とした解説施設です。2022年にリニューアルされたとのことで、発電機の模型や、ドローン映像、地域の自然や風土などのほか、下写真の視聴覚教室のようなところでは、バーチャル施設見学ができる設備です。ゴーグル状のモニターを装着して場所を選ぶと、自分の全周方向、首を向けた場所がリアルタイムで見学できます。
 上記モニターを装着して二人で見学したのですが、操作方法などについて話が合いません。現れる画面には2系統あって、違いがあるようです。でもやり方がわからないだけで、同じなのかもしれません。 (;^_^A
 只見展示館を出て、只見町ブナセンターに向かいます。浅草岳?など周辺の高山は11月中旬ですでに雪をまとっています。
 次の見学スポットは只見町ブナセンターです。失礼ながら、会津の最奥で新潟へ超える道も半年は通行止めというこの地で、公営(多分)の施設では大した期待は持てないだろうと思っていました。
 でも屋外の水景や館内の広さ、立体的な配置と、水流を伴って自然を模した水槽には渓流魚も泳いでいます。自然が中心の解説ですが、人文的なものや民俗・地質と地形・気候・植生・動物など広範な知識が、要領よくまとめられていて充実しています。
 中二階の辺りにあった「ドウ」です。多分「胴」だと思うのですが、餌を入れて川底に設置し、各種の川魚を取り込み、脱出しにくい「返し」が付いていて回収しに行くと魚がGETできるという罠です。
 もう60年も前ですが、私も地元の川にウナギドウを仕掛けに通ったことがありました。残念ながら雑魚しか捕れませんでしたが、現代の豊富な流通網と食生活が無かった頃の生活の糧だったようです。他にもたくさんの実用民具があります。
 そしてこの時期限定で展示されていた企画展「只見のトンボ」も見ごたえありました。トンボは空飛ぶ宝石とも呼ばれますが、トンボマニアでなくても、捕まえて目の前でにらめっこすると、複眼の不思議でカラフルな輝きに魅了されます。
 この後のPキャン地でテレビを見ていたら、このブナセンターの受付を担当していた方が出てきて、この企画展の解説をしていました。只見町内のトンボ調査を自分で行って整理し資料を作成して展示してくださったようです。パネルだけではなく動画でもトンボの珍しい生態を各種撮影しては追加しているようです。只見町内で2020-2022に実際に撮影した写真などです。
 私の地元ではせいぜい 普通のトンボ(アキアカネ?)、シオカラ(ムギワラ)トンボ、オオシオカラ同、オニヤンマとイトトンボ・川トンボくらいしか見たことが無く、ここ数年で 瑠璃星ヤンマとショウジョウトンボ、チョウトンボ、ウチワヤンマを見たくらいが全部です。それから撮影が非常に難しい。枝に止まるトンボはまあまあとして、ホバリングが短い種類なとは特に大変そう。カメラも進歩はしていて、野鳥撮影専用の機能が付いたものなどあるようですが、トンボは小さくて難しいのではないでしょうか。
 館内には日当たりのよい休憩室や図書もあって、一日のんびり過ごすのもよさそうです。
 移動の途中で、Pキャンに最高なところを見つけました。只見川農村公園というところで、ブナセンターの川向になりますが、周囲には建物等何もないところです。ですが、舗装された駐車場に、完璧な多目的トイレも備わっています。車中泊マップに推薦しておきました。
 昼食に向かったのは駅前通りにある「和風レストランまほろば」です。いただいたのは 穴子(てんぷら)丼と天ぷらそばです。味も価格もまんぞくでおなか一杯になりました。ですが、食べながらメニューをよく見ると、昼食時間帯にはもっとお得なメニューもあるようです。焦らずにじっくり検討してからでもよかったかも。寿司など海鮮系もあります。
 まほろばの向かいにある「ふるさと館田子倉」です。民家を改装して作った建物のようで、ブナセンターと共通の入場券で入れます。この家の前にも石垣で囲った鯉を放せそうな池がありましたが水は入っていません。

 只見川ほど、水力発電に貢献している地域は無いと思います。河川の縦断面を見ると、上流から 奥只見・田子倉・只見・・・途中まではJパワーの施設で、下流では東北電力の管轄になっているのですが、階段状にダムを設置してほぼ無駄なく高低差から来る水力を効率的に電気に変換しています。
 田子倉地区では古来の集落が移転をしてダムが築かれましたが、その経過にまつわる人々の苦労と事業の関りや、文学作品にも光を当ててを学ぶことができます。
 多島海時代の地層の残丘とされる蒲生岳を望みながら、只見線(川)に沿った国道252号を柳津方面に向かいます。
 何時間か前に乗った只見線の鉄橋を見ながら一往復半目の道を進みます。豪雪地帯らしく国道にはスノーシェッドが各所に続きます。
 発電用のダム湖の畔を只見線と国道が平行したり交差しながら進みます。
 各ダム湖には、意外に船舶が多く航行しています。よく見ると、台船やバケット付きクレーンが多く、湖底に沈んだ土砂を掬いあげる作業のあと、曳航して各地の陸揚げ基地まで運び、そこで一度山積みにし、今度はダンプカーに積んで埋め立て場所まで運んでいます。
 
 各種発電方法には長所と短所があって、水力の場合には土砂の堆積や生態系への影響が懸念されます。また水害対策の面でもダム湖の有効容量が次第に土砂で減少して来るのを復旧する必要があります。只見川では特に水害対策の面でこのような浚渫工事を行っているようです。
 この日の入浴は、せせらぎ荘です。天然の炭酸泉で、湯船につかってみていると、うぶ毛に微泡がたくさん付いて、撫でると泡次ぐが浮いてきます。他の泉質の湯船もあります。残念ながら浴室の写真はありません。
 この近くにある沼沢湖と要妖精美術館には以前に立ち寄ったことがありますので、今回は割愛します。
 道の駅奥会津かねやま に隣接した、東北電力のPR施設みお里に来ました。只見川の上流部は電源開発(Jpower)が管理していますが、下流は東北電力の管轄になっているようです。
 映像や模型や歴史を説明するパネルで勉強できますが、ステンドグラスに西日が当たってきれいな時間帯に入ることができました
 資料館・博物館等の施設は、やはり現地で見ると理解が進みます。最近の展示施設で見かけるのが、立体地形に上方からプロジェクターで様々な資料や地形に合った状況説明を投影して、それが動いて経時変化も追うことができ、さらに音響効果や説明と併せて学習できる設備です。地形が頭に入っていなくても一目で理解が進みます。
 東北電力の初代会長は白洲次郎とのことです。どこかで聞いた名前でしたが、戦後GHQと対等に渡り合うことが出来た数少ない日本人でした。そのお姿の写真では必ずポケットに手を入れていて、何かを自負して信念をもってやろうとした人のようです。パネル説明を撮影してきたので後で読み返してみます。
 只見川沿いに下流方向へ進み、下流のダムや発電所、前述の只見線ビューポイント等を見学した後、道の駅柳津で今夜の宿を借ります。
 こちらの道の駅では、物販・トイレ・案内等の通常の設備のほかに、ポケモンのキャラクターであるラッキーの公園もあって、日中はにぎわうようです。また旅館や温泉も隣にあります。
 翌朝散歩しましたが、赤いアーチの国道の橋が印象的です。旅館のお部屋では朝食の準備中です。足湯もあるようですが、まだ開いていませんでした。
 この街道筋の他の道の駅に比べて、Pキャンする方はあまりいなくて、売店も心なしか静かに感じました。国道から少し離れて静かでもあり、私的にはお勧めです。
  つづく・・・